Last Updated on 2026年2月11日 by 美容おじさん
湿度が80%を超え、アスファルトからの照り返しが容赦なく襲いかかる、日本の過酷な夏。 朝の通勤ラッシュ、駅のホームで電車を待っているだけで、背中をツーッと嫌な汗が伝うあの感覚。
「ああ、もうジャケットを脱ぎ捨ててしまいたい…」
そう思いながら、ふと目の前にいるビジネスマンの背中に目をやった時、あなたはこんな「残念な光景」を目撃したことはありませんか?
薄手の夏用スーツの生地が、汗で背中に張り付いている。
そして何より、その生地が薄すぎるあまり、中の白いワイシャツの柄や、あろうことかインナー(肌着)のラインまでもが、うっすらと透けて見えてしまっている。
その瞬間、どんなに立派なカバンを持っていても、どんなに整った髪型をしていても、その背中からはどうしても拭いきれない「安っぽさ」と「頼りなさ」が漂ってしまいます。
「自分も、後ろから見たらあんな風になっているんじゃないか…?」
そう不安になったのなら、それはビジネスマンとしての正常な危機管理能力です。
涼しさを求めるあまり、生地を極限まで薄くし、「裏地」を減らしただけの安価な夏用スーツは、スーツ本来が持つべき「構築感(立体感)」を失っています。
それはもはやスーツではなく、ペラペラの「シャツジャケット」のようなもの。
これでは、部下を率いる40代のリーダーとしての「威厳」や、大人の男としての「品格」まで薄れてしまいます。
「涼しさ」と、スーツとしての「重厚感」。
この相反する二つの要素を、日本の酷暑の中で両立させることは不可能なのでしょうか?
いいえ、答えはイタリアの仕立て技術の中にあります。
その正解こそが、「大見返し(おおみかえし)」と呼ばれる仕立てです。
今回は、イタリアのサルトリア(仕立て屋)でも愛されるこの贅沢な仕様が、なぜ夏の悩みの種である「透け」と「汗ジミ」に劇的に効くのか。
その構造的なメリットと、Suit Yaでこの仕様をオーダーすべき理由を解説します。
夏スーツの落とし穴。「背抜き」だけでは不十分な理由
まず、多くの人が陥っている「夏用スーツ選びの間違い」について整理しましょう。
量販店の夏用コーナーに行けば、必ずと言っていいほど「涼しい」「通気性抜群」というタグがついたスーツが並んでいます。
そのほとんどが採用しているのが、「背抜き(せぬき)」という仕様です。
背抜きとは、ジャケットの背中部分の裏地を省き、通気性を良くしたものです。
確かに、総裏(そううら)の冬物スーツに比べれば涼しいのは間違いありません。
しかし、40代の汗かき世代にとって、標準的な「背抜き」だけでは、日本の湿気には太刀打ちできないのです。
「背抜き」の限界:前身頃に残る「ビニールの壁」
なぜ、背抜きスーツを着ていても、胸元や脇に汗ジミができてしまうのでしょうか?
それは、背中の裏地はなくなっていても、「前身頃(まえみごろ=胸やお腹の部分)」には、依然として裏地が残っているからです。
一般的な既製スーツの裏地には、耐久性を重視して「ポリエステル」が使われることがほとんどです。
ポリエステルは丈夫ですが、吸湿性はほぼゼロ。
つまり、通気性の悪い「ビニール」を胸元に貼り付けているようなものです。
背中は涼しくても、心臓に近い胸元には熱がこもり続けます。
行き場を失った熱気と湿気は、大量の汗となって噴き出し、結果として脇や胸元に、見るも無惨な「汗ジミ」を作ってしまうのです。
これでは、どんなに涼しい顔をしていても、清潔感は台無しです。
「透け」の恥ずかしさ:薄さは「安っぽさ」に直結する
もう一つの問題が、冒頭でも触れた「透け」です。
コストを抑えつつ涼しさをアピールするために作られた安価な夏用スーツは、生地の織り密度をスカスカにしたり、極端に薄い糸を使ったりしています。
確かに風は通るかもしれません。
しかし、光が当たると、その薄さが仇(あだ)となります。
会議室の蛍光灯の下や、晴れた日の屋外で、ジャケット越しにシャツのシワや、ベルトのバックルの形までが透けて見えてしまう。
これは、見ている側に「涼しそう」という印象よりも、 「なんだか頼りないな」 「ペラペラの安い服を着ているな」 という、ネガティブな印象を強く与えます。
特に40代ともなれば、自身の装いがそのまま「会社の信頼性」に直結する立場です。
向こう側が透けて見えるような軽いスーツでは、重みのある言葉を語ることはできません。
「大見返し」とは何か? 裏地を捨て、表地を纏う贅沢
では、どうすれば「涼しさ」を確保しつつ、「透け」や「汗ジミ」を防ぎ、さらには「高級感」まで手に入れることができるのでしょうか。
そのための切り札が、「大見返し(おおみかえし)」です。
別名「アンコン仕立て(アンコンストラクテッド・コンストラクション)」とも呼ばれるこの技法は、高温多湿なイタリア・ナポリの仕立て屋たちが生み出した、知恵と美学の結晶です。
構造の解説:裏地を捨て、表地で包む
通常のスーツの内側を見てみてください。
胸ポケットの周りや、裾の方まで、ツルツルとした「裏地」が貼られているはずです。
「大見返し」は、この裏地を極限まで取り払います。
その代わりに何を使うのか?
それは、「スーツの表地(ウール)」そのものです。
ジャケットの襟(えり)から続く表地を、そのまま内側へと大きくカーブを描くように延長させ、裏地の代わりとして贅沢に使用します。
内側の胸ポケット周りから、脇の下あたりまで、すべてが美しいスーツ生地で覆われる構造。
これが「大見返し」です。

なぜ「贅沢」なのか:コスト度外視の美学
「裏地を表地に変えるだけで、そんなに変わるのか?」
そう思うかもしれません。
しかし、これは既製服メーカーにとっては、非常に頭の痛い仕様なのです。
なぜなら、「生地代(コスト)」が跳ね上がるからです。
スーツを作る際、最もお金がかかるのは「表地(ウール)」です。
裏地のポリエステルやキュプラに比べれば、その価格差は数倍にもなります。
「大見返し」にするということは、その高価な表地を、通常よりも遥かに多く(用尺を増やして)使用することを意味します。
見えない内側に、あえて一番高い生地をたっぷりと使う。
だからこそ、コストカットを最優先する量販店の既製スーツでは、この仕様はほとんど見かけません。
逆に言えば、ジャケットの内側を見た瞬間に「大見返し」になっていれば、それは 「コストを惜しまず、着心地と美しさを優先して作られた高級なスーツである」 という、無言の証明になるのです。
それはまさに、見えない部分にこそ金をかける、日本人の「粋(いき)」の精神にも通じる、大人のための贅沢な仕様と言えるでしょう。
「涼しさ」と「品格」を両立する3つのメリット
- 「贅沢なのは分かった。でも、本当に涼しいのか?」
- 「裏地を外したら、安っぽく見えるんじゃないか?」
そんな疑問を持つあなたに、大見返しがもたらす3つの劇的なメリットを解説します。
これは単なる自己満足の仕様ではありません。
日本の酷暑を戦う40代のビジネスマンにとって、最も合理的で、機能的な「武器」となるのです。
① 圧倒的な通気性と吸湿性:ウールは「呼吸するエアコン」
まず、最大のメリットは「涼しさ」です。
なぜ、裏地があるだけで暑く感じるのでしょうか?
それは、一般的な裏地に使われるポリエステルが、「汗を吸わず、熱を閉じ込めるビニール」だからです。
想像してみてください。
真夏に、背中はメッシュなのに、胸元やお腹周りにサランラップを巻いていたらどうなるでしょうか?
当然、汗はずっと肌の上に残り続け、不快感と悪臭の元凶となります。
一方、スーツの表地に使われるウール(羊毛)は、「呼吸する繊維」と呼ばれています。
ウールは、自身の重量の約30%もの水分(汗)を吸い込み、気化熱として空気中に放出する性質を持っています。
つまり、天然のエアコンのような機能が備わっているのです。
大見返し仕様にすることで、汗を閉じ込めるポリエステルの裏地を排除し、ウール本来の通気性と吸湿性を最大限に発揮させることができます。
風が吹けば、まるでTシャツ一枚でいるかのように風が通り抜け、かいた汗はすぐにウールが吸い取って放出してくれる。
この「風を纏(まと)う」ような感覚は、一度体験すると、もう二度と総裏や背抜きのスーツには戻れなくなるほど快適です。
② 「透け」を防ぎ、バストの立体感を守る:薄くても、強い
次に重要なのが、「透け防止」と「立体感」です。
夏用スーツの悩みである「透け」。
これは、生地を極限まで薄くした結果、強度不足を補うために裏地を貼らざるを得なくなり、その裏地すらも薄く安っぽくなってしまったことによる弊害です。
大見返しは、構造的にこの問題を解決します。
前身頃(胸元)の裏側まで、たっぷりと表地を折り返してくるため、実質的に「表地+表地」の二重構造になります。
同じ生地が重なることで、当然ながら透け感はゼロになります。
白いシャツを着ていても、インナーのラインが透けて見えることはありません。
さらに、この二重構造がもたらす恩恵は「透け防止」だけではありません。
生地に自然な厚みとコシが生まれるため、胸板をたくましく見せる「立体感(ドレープ)」が維持されるのです。
ペラペラのシャツジャケットのように貧相にならず、ジャケット本来の美しい構築的なシルエットを保つことができる。
涼しいのに、重厚感がある。
この矛盾を解決できるのは、大見返しだけの特権です。

③ 脱いだ時の「美学」:裏を見せる楽しみ
そして最後は、「脱いだ時の美しさ」です。
日本のビジネスシーンにおいて、ジャケットを脱ぐ機会は意外と多いものです。
オフィスに着いてハンガーにかける時、レストランで食事をする時、あるいは暑さで手に持って歩く時。
その時、チラリと見える内側の景色。
もしそこが、汗で変色した安っぽいポリエステルの裏地だったらどうでしょうか?
あるいは、縫い代が雑に処理された、見るに耐えない裏側だったら?
せっかく表向きはビシッと決めていても、一瞬で「見かけ倒し」だとバレてしまいます。
大見返しの場合、内側に見えるのは美しいスーツ生地そのものです。
パイピング(縁取り)処理された縫い代や、丁寧に仕上げられた内ポケット周り。
そこには、まるで高級車の内装のような、機能美と高級感が漂っています。
風で裾がひるがえった瞬間に、チラリと見える同生地の美しさ。
「見えないところまで手を抜かない」
その姿勢こそが、40代の大人の余裕と色気を感じさせ、周囲からの信頼感を高めるのです。
Suit Yaで「大見返し」をオーダーする際のポイント
では、実際にSuit Yaでこの仕様をどうオーダーすればいいのか。
最高の一着を仕立てるための、生地選びとオプション指定のコツを伝授します。
生地選びは「フレスコ」か「トロピカル」:風を通す最強の相棒
大見返しにするなら、選ぶべき生地は決まっています。
せっかく裏地をなくして通気性を良くするのですから、生地自体も風通しの良いものを選ばなければ意味がありません。
おすすめは以下の2つです。
- フレスコ(ポーラ): 糸を強く撚(よ)り合わせ、メッシュ状にざっくりと織り上げた生地です。 通気性は最強クラスで、シワになりにくく、ドライな肌触りが特徴です。 大見返しの重厚感と相まって、クラシックで男らしい夏スーツになります。
- トロピカルウール: 細い糸で平織りにした、夏用ウールの代表格です。 薄手で軽く、シャリ感があり、サラッとした着心地です。 大見返しにすることで、適度なハリが生まれ、ペラペラ感を解消できます。
Suit Yaの生地検索で「夏用」「通気性」といったキーワードで絞り込み、この2種類の生地を探してみてください。
オプション指定:クリックひとつで世界が変わる
オーダー画面に進んだら、デザイン選択の項目で「裏地仕様」を探してください。
そこで「大見返し(アンコン仕立て)」を選択するだけです。
(※選択肢にない場合は、アンコンモデルを選択するか、備考欄に記入することで対応可能な場合があります。必ず確認してください。)
さらに、ここで裏技を一つ。
袖の裏地(袖裏)の素材を選べる場合は、迷わず「キュプラ100%」に変更してください。
ポリエステルの袖裏は静電気が起きやすく、腕を通す時にムワッとした熱気を感じます。
キュプラなら、袖を通した瞬間に「ヒヤッ」とした冷感があり、シルクのような滑らかさで腕がスルスルと入っていきます。
「大見返し+キュプラ袖裏」 この組み合わせこそが、日本の夏を制する最強の布陣です。
まとめ:酷暑こそ、仕立ての良さで差をつける
「たかが裏地の話だろう」 そう思うかもしれません。
しかし、そのたった一枚の布の有無が、あなたの夏のパフォーマンスと印象を劇的に変えるのです。
総括:涼しさは我慢ではなく、技術で手に入れる
暑いからといって、だらしない格好をしたり、ペラペラの安物に逃げたりするのは、もう卒業しましょう。
大人の男にとって、涼しさとは「我慢して脱ぐもの」ではなく、「知恵と技術(仕立て)で手に入れるもの」です。
「大見返し」は、単なるデザインではありません。
高温多湿な気候の中で、いかに快適に、いかに美しくスーツを着るか。
先人たちが追求した結果たどり着いた、機能美の極致なのです。
マインドセット:風を纏う快感を知る
今年の夏は、汗だくで背中に張り付く裏地と決別してください。
そして、風を纏(まと)うような、軽やかで涼しい着心地を手に入れてください。
駅のホームで、汗をダラダラ流して不快そうな顔をしている周囲のビジネスマンを横目に、あなたは涼しい顔で颯爽と歩くことができる。
その余裕こそが、ビジネスにおけるあなたの価値を高め、自信へと繋がっていくはずです。
アクション:次のオーダーは「大見返し」一択
さあ、Suit Yaのサイトを開き、夏用生地を選んでみてください。
そして、オプション選択で迷わず「大見返し」をオンにしてください。
届いたスーツを手に取った瞬間、その軽さに驚くでしょう。
そして袖を通し、鏡を見た瞬間、その重厚感と品格に、再び驚くはずです。
「軽くて涼しいのに、見た目は重厚」 この魔法のようなギャップを、ぜひあなたの肌で体感してください。
それが、今年の夏を勝利するための、最初の一手となるでしょう。


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